たてただけ

三日坊主にすらなれない

私的映画ランキング2020

コロナ禍な世の中いかがお過ごしでしょうか!

今年は「全く観れてなくて記事にするか迷った」去年以上に観れていませんが、そんなこと気にせずに好きにやったらいいぜ!

では20位から。

 

20.スレート

今年はけっこうTIFFで固めて観賞しました。それなかったら30本未満?ヤバいな。

韓国産キル・ビル真正面リスペクトな娯楽作。

久々に「たのしい!!!!!!」って感情だけでいいんだなって思える作品だった。

しかし言ってしまえば闇鍋である。その闇鍋を楽しめるかどうかはお前次第。

最後に「あっこの監督映画好きなんやなー」って思える仕掛けも込みで。

たのしい!!!!!!!

 

19.燃ゆる女の肖像

一転こちらは美しい作品でしたね・・・

最後の最後の「肖像」が素晴らしすぎて…あれで全て持って行った感。

ロケーション最強だし、価値観も立場も異なる3人の女性の尊き瞬間の「ポートレート」は本当に素敵。

額縁に嵌められることから逃れることを願う彼女たちにとって、この島はまさに「楽園」。

それだけにあのラストよな。

 

18.ミッシング・リンク

イカっていいよね〜〜〜〜〜ってまた思った。

純粋に明るい冒険活劇でありつつ主人公は初めて大人っていう、誰が観ても一定の満足感を得られる良作になってる。それゆえにトガリが少なくて現地で興収振るわなかったんかなー。

様々な意味での「ミッシング」を忍ばせる脚本もお見事。

主人公がヒューさんでけっこうな演説していて、グレショ文脈から「見世物」扱いや名誉を追う皮肉も込められていそうなのがニクい。

エンドロール恒例の撮影シーン観ると、コロナ禍どうするんだろうな〜とも思ってしまう。

 

17.トラブル・ウィズ・ビーイング・ボーン

アウトすぎるけど美しい、ロリータアンドロイドと人間の「交流」…と思わせておき、「弱き者へ自らの慰めの役割を持たせて、思いをぶつけていく」ことへの危うさを叩きつける作品。

中身はそんな思いがあるけど、みてくれがアウトすぎて他の国じゃ公開絶対無理だから、貴重な機会だったなーというのもありつつ。

ロボ的演技を卒なくこなす子役も素晴らしかったなあ。

 

16.皮膚を売った男

ここまで全部TIFF。本当に開催されてよかったなあ。

ザ・スクエア 思いやりの聖域」であった、猿パフォーマーのシーンの居心地悪い感じを1本続けるような感じ。
ただ「ザ・スクエア」はそれをずーっと引きずったけど、こちらは異なるアプローチをとったことによって「痛快さ」が生まれていた。

大事なのは背中か彼か、それだけで分かれる見方・行動がもうあからさますぎですわ。

亡命できた側としての、祖国にいる家族との距離が段々遠くなってしまう悲しみという視点は新鮮にうつった。

突飛な主題と展開で揺さぶるエンタメ性もあり、思わず笑ってしまうようなシーンもあり、それでありながら、「偏見」を容赦なくあぶり出す。まさしく痛快作。

 

15.アングスト/不安

殺人を繰り返す主人公を通して観客の非道さを突きつける、めちゃくちゃ良い作品だったなあ。

どんどん同情させにかかるのが恐ろしいったらありゃせん。
内に内にと閉じ込めていた「彼」の欲望が放たれる解放感を表すカメラ演出も光った。
いっつも言ってるけど、「私たちがシリアルキラーに惹かれるのは、ひとえに彼らが私たちの「if」だからに他ならない」からだよなと。

 

14.この世はありきたり

岡田あがささんオンステージ。気持ち悪すぎるこじらせ圧巻。

でも出来事全然ありきたりじゃねえ!

「もしかしてここだけで終わるのか!?」と思うくらいだった廃工場の独白からヤバすぎた。
「何も関心がない」父さんのリアルぶりとか、なによりも店長さん最高。
家族、友人、恋人、そして…。様々な「つながり」は誰がためにあるのだ?

 

13.異端の鳥

子どもが色々なひどい大人のせいでひどい目に遭って歪んでいく地獄、時々会う優しい人の優しさまでもが彼を苦しめ歪みを加速させていてそしてまた地獄。

極度に無口な主人公の子役は表情だけの演技が凄まじかったなあ。

ホロコーストものというよりは、それはあくまで大きな背景として主人公の子にフォーカスしているんだが、彼が会うひどい大人もその「大きな背景」によって歪んでいったのならと思うと、地獄が地獄を作り出すスパイラルの罪深さに心折れた。

 

12.初恋

ヴァイオレンスとアツさとバカバカしさの超融合。
そして「詰んでる」若者たちがどう足掻いていくのか?

彼らの大立ち回りが、笑っちゃうほどイカれた暴力の「カオス」へと、奇跡の一夜をいざなっていく。

ヤクザたちのナリや出で立ちは、観客が見たかったモノをしっかり魅せてくれてた。

ベッキーイカれかたもとても良かった、ちゃんと怒ってた。

無理そうだと思ったシーンの「やりかた」がアクロバティックすぎ!!!ここで今作のバカバカしさとやりたい放題ぶりが極地に至って最強になってた。

三池フェチ100%。バカ面白かった。

 

11.音楽

研二の気まぐれにユルくノる2人と、巻き込まれる周囲が織りなす、束の間の青春。

この作品はとにかく「間」が良かった。実は笑いで一番大事なのってそれなんじゃないかって最近思う。
画が写実的だと声の演技に違和感を感じることもないというのも今作での発見だった。そういう意味でも表現方法や演者や諸々がかち合ってる。

まさに” Don’t think, feel”な絵とストーリー。でもそれこそが「音楽」の本質でもあるんじゃないかとも。

 

10.Fate/staynight Heaven's feel 第3章

Fate/Zero」から9年。ufotable制作陣の皆さんは、あの時以上のハイクオリティな映像を創り出して、Fateシリーズ有終の美を飾ってくれた。
彼らがいなければ、アニメを楽しむ自分がいなかったのは間違いない。

 前章から引き続いて「動」と「静」の両表現ともずば抜けたクオリティ、更に今作では異なるベクトルの表現技法で物語へ没入させる術に挑戦してた。

特に「動」の表現は前章から更にハイクオリティ。サーヴァントvsサーヴァントのスケールが大きすぎる戦闘であっても、だいたい何をやっているか分かるのが凄いわ。
粉塵をもっと撒いて有耶無耶にしていいところでもしっかりと描き込んで、枚数も増やすし。
2章よりも大きな戦闘が少ない(かな?)分、個々の戦闘を重厚なものにできてる感。
シナリオ面では「Zero」含めたシリーズを通して、最も本来の意味での"fate"を感じた。
サーヴァントだけでなくマスター側も、第4次いやそれ以前まで巻き込んだ「宿命」を抱え、それらが複雑に絡み合い、各々がその"fate"に向き合いフィナーレへと向かう。

しかしそのたたみ方は…あまりに心に来た。
約束された名シナリオに最高クオリティの映像、全てにおいてレベルの高い三部作だった。
自分のFateシリーズはこれにて終了です。

 

9.ヴァイオレット・エヴァーガーデン

物語自体は相変わらずベタもいいとこなんだけれども、それでも観客を白けさせずに純粋なる感動へと誘えるのは、ただ家族/友人との「美しき絆」だけでなく、(それが絆の強調のみの意味合いだろうと、)裏返しの「呪い」も避けずに描いているからこそと感じる。そこはやっぱりさすが「脚本・吉田玲子」の揺るぎないブランド。
そしてなにより京アニの圧倒的な画力だよ。たぶんこの企画は京アニ以外だったら物語のクサさが目立って成立してない。

生物図鑑の動物イラストに始まり、義手の光沢、朝露に濡れる草花、そしてMMFRのあのシーンすら彷彿とさせる、豪雨の中膝をつく姿。全てが京都アニメーションでしか成せない、繊細で美しく、尊い描写。

京アニ作品で必ず印象に残る、あの「女の子がときめいた時の瞳の輝き」、あれが大好きで。それが失われていなかったのが本当に嬉しい。

「ア-ナタノ-コエガ-」をまた聞く羽目になったこと以外は素晴らしかったです。

 

8.ANNA アナ

とにかくビジュアルに振り切って「魅せる」女スパイ映画。
観ていてひたすらに「美しく」、そして「楽しい」。

ちゃんと良くないところもあるけど、それ以上にビジュアルが良い。

鮮血に塗れた純白のファーコートを脱ぎ捨てて、黒いレザー姿で無双していく格闘シーンはまさに「クールビューティ」でたまらない。「アトミック・ブロンド」の「女性」としての立ち回りとはまた違う、少々ファンタジーも入った無双ぶりだったけど、見たかったのはこれなんですわ。魅せる画づくりにやられっぱなし。

モスクワ・パリ・ミラノを股にかけているのもあってか、景観も美しい。序盤のカーチェイスが急ハンドルするだけの単調なものだったのに、景観のおかげで画づくり的にはマシなものになっていた程にね。

そんな「アクション」と「美しさ」がシンクロするのは、要人を56しまくるダイジェストシーン。音ハメ要素が多分に含まれていて、「ベイビー・ドライバー」的爽快感もあり、様々な56しかたを魅せる良さもあり、そしてアナが様々な出で立ちで56していく絵的な美しさもありで特に印象に残った良いシーンだった。

エンディング曲が007的テイストを持っていることからも分かるように、あくまで「スパイ」要素を強調したい映画だから、「アクションマシマシでスカっと」系に振り切ってるわけでないからな!そこだけ注意な!

 

7.ミッドサマー

アリ・アスター監督自身のティーチインがだいぶ昔に感じてしまう。

あまりにも違う世界に連れて行かれる分、没入感が半端なく、だいぶ余韻感じていたらしい。

ロケーションや壁画、衣装などの雰囲気作りが抜群に良すぎた。広大な草原にイチから建てたロッジに、意味深すぎる壁画、そして純白で自然的すぎる白装束、しきたり、花飾り。そら没入しないわけないわ。

「物語」は暗がりから始まり、祭典へと近づくにつれてどんどんと明るくなっていく。
ダウナーな彼らを無理やりポジティブへ連れて行ってしまうような、そんな病的な明るさだった。

そして病的なトリップ表現もまた凄まじかった。あの空間の異様さと幻覚表現は絶妙にマッチしていて、いよいよヤバいねこれねぇ!!と、観ていて不思議&興奮。

ドン引きすりゃええのやら笑えばええのやらなしきたりは理屈こそ通ってるけど、遠目から見るとめちゃくちゃシュールな画。そういった俯瞰の目を担う「人」がどのように移り変わっていくかにも注目。

監督の笑顔の底にある恐ろしさを、また垣間見たわ。

 

6.透明人間

晦日にギリギリで見たのが滑り込みトップ10入り。

前半合わなくて見るのやめようかと思ったけど、ある展開でこっちが想定していた主題を越えてきて一気に引き込まれた。
今のCGでちゃんと「見えない」透明人間も怖いけど、それよりも恐怖に取り憑かれて殺意に満ち満ちたエリザベス・モスの顔面が超こええよ…

純粋なる被害者かそれともパラノイアかっていう境界線の間で反復横跳びしているような、そんな危うい役を演じたエリザベス・モスは本当にヤバみの塊。

まあそれもそのはずで、透明人間の追い込み方がとにかく超陰湿。ただ不意打ちで殴るわけでなく、見えない優位性を存分に活かして、良心や信頼を踏みにじりにかかる。こっちが予想するラインを絶妙に上回ってきて最高に不快にさせてくれた。あと腕っぷしが異常なほどに強い。

シナリオも普通そこで終わるやろってところから更に展開していって、そこからの着地もお見事。

しかし今作の主題が、透明人間と同じく見えないものである「心」の戦いだったのだと気付いた途端にゾッとした。

強烈。

 

5.TENET

グランドシネマサンシャイン裏のホテルとって観に行ったわ。

「映画が帰ってきた」と真に思えた作品だった。

そして内容自体も後にも先にもなさそうな作品だったし。

やっぱり毎回ちゃんと「俺にしかできない映像を撮ってやる」っていう意気込みでやってくれるノーランは素直にすげえと思うぜ。

「007撮らせてもらえないからそういう感じの映画撮っちまうべ、でも普通じゃおもんないから007で絶対できないことやんべ」ってノリ。それがもう極まりに極まりすぎて、ノーランにしか撮れないものになってた。

飛行機突っ込ませるみたいな派手に金かけたシーンもあるけど、このアイデアはノーランが映画を志した原初からあったものだろう。そのアイデアを本当にやってみせるノーランの胆力はもはや「意地」。

そしてルドウィグ・ゴランソンの劇伴がすげえ。「劇伴」として完璧。スパイ映画みムンムンな緊迫感・高揚感を煽る曲がめちゃくちゃ良かった。Spotifyでよう聴いたわ。
間違いなく劇場でしか感じられない映像と迫力とエモーションだった。

 

4.風が吹けば

今年フィルメックス初参加でした。
再開を目指すナゴルノ・カラバフの空港へ派遣されたフランス人監査士と現地の人々の交流。

気さくな人々、美しい田舎の町並みだからこそ、確かに落ちている影がより濃く映る。

景観は勿論、美しい画づくりが細部まで行き届いていた。草原を進むアランの画は特に印象深い。

「君たちの地図が正しいとは言えない」って言葉、最初は「そんな無茶な…」って思ったけど、後々にその真の意味を思い知る。あまりにも苦しく辛い「現実」と向き合いながらも故郷に住まう、「彼ら」の信念には心動かされずにはいられない。

水泥棒の少年が咎められない、その意味が分かったときは愕然としてしまった。

 

3.羅小黒戦記 吹替版

これを観た後は本当に声優人気にかまけて適当な作品作ってる奴等を全員はっ倒したくなった。それほどのフレッシュな熱量がやって来た。

マジで欠点ないエンタメ。文句なく万人にオススメ。

バトルシーンの比較対象は日本アニメじゃなくてMCUだし、環境問題にもメスを入れつつ、そして感動への積み重ねも秀逸。
その上で、日本の声優陣が当てることで見やすくなっていて、故に「吹替版」とした。
井上俊之さんが『MTJJ監督の作品に呼ばれたらどうする?』という質問に対して「僕必要なんですかねぇ…」と言ったのも頷けてしまう。それ程の改心作。

MTJJ監督たちスタッフ陣の今後は無論期待だが、自分はそれだけでなく、この作品を食らった日本のアニメを創る人達が、「果たして自分は何を描いていきたいのか?」というアイデンティティを再考した、その延長線にある渾身の「アンサー」が本当に楽しみです。

 

2.ナイブズ・アウト

荒野行動はやるな。

「アレかと思ったらアレかと思ったら…」っていう十八番の裏切りは勿論、やっぱりライアン・ジョンソン作品はルックが最高にイカしてる。
館やロケーション、服装、そしてなにより欲しいところで最高のアングルの「画」をしっかりと魅せてくれる。本当に「映画観てるな〜」という実感を真に与えてくれる。

存在だけでイカしてるダニクレ、キャップと真逆なクリエヴァのギャップが最高なのは勿論だけど、やっぱアナ・デ・アルマス良いよね。

やっぱライアン・ジョンソンはたまんねえよ。

 

 

1.ジョジョ・ラビット

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影落ちる「あの頃」、靴紐も結べない少年は、自らにもたらされてきた「愛」を知る。

 

もうジョジョくんの純粋さがとにかく尊い。けど彼が「ごっこ」から本当に危険な方向へと進まないようにと守ろうとする周りの大人もまた尊い

ジョジョに「正しい」方向を、希望を与え続ける母・ロージーの美しさ。「社会」のはぐれものとしてジョジョにシンパシーを感じながら、ユーモアとともに明るくあり続ける、父代わりのキャプテンK。キャプテンKを健気に支えるフィンケルも、コメディリリーフなミス・ラームも素晴らしかった。
あと子供ながらもどこか悟った感のあったヨーキーくん。時代に翻弄されながらも、戦争とかを超えた「人の本質」を純粋に露わにしていたのは彼かもしれない。
そしてそんな子供と大人の中間にいる「囚われ」のエルサ。本来は最も自由を享受していい年頃の彼女が強いられている状況には、本当に胸が痛くなるところなんだけど、そんな中でジョジョと交流をすることが少しの慰みになってくれているなら……

とかくすべてが愛おしい。

 

そんなジョジョのイマジナリーフレンド「アドルフ」は、ジョジョが少しずつ周囲の人々の「愛」を知るにつれて、言動が現実の「彼」へと近づいていく。これはジョジョ自身の成長と、ナチ崇拝の気持ちが乖離していくことを表していて巧み。

そもそもタイカヒトラー演るのも、全編英語なのも、全てナチへの強烈な皮肉。ナチスドイツ舞台なのに敵国言語で話が進むし、ユダヤ人ハーフのタイカだからこその意味付け。

 

そしてなにより素晴らしかったのは色彩表現。ロージーの服装が鮮やかで本当に美しかったのはもちろんだけど、戦争の香りが色濃くなるにつれて、色彩もくすんでいくという展開。
人それぞれが鮮やかに生きていくことが、本当に尊いものなのだ…というメッセージだと感じた。


物理的にも心理的にも「分断」が加速してしまった2020年。
来年こそ、その「分断」が少しでも癒えて、「紐を結ぶ」作品が多く出てきてほしい。

 

 

1.ジョジョ・ラビット

2.ナイブズ・アウト

3.羅小黒戦記(吹替版)

4.風が吹けば

5.テネット

6.透明人間

7.ミッドサマー

8.ANNA アナ

9.ヴァイオレット・エヴァーガーデン

10.Fate/staynight Heaven’s feel Ⅲ


11.音楽

12.初恋

13.異端の鳥

14.この世はありきたり

15.アングスト/不安

16.皮膚を売った男

17.トラブル・ウィズ・ビーイング・ボーン

18.ミッシング・リンク

19.燃ゆる女の肖像

20.スレート

 

2021年に期待すること

・ディズニーが終わること

・007が公開されること

・シンエヴァ庵野さんの好きなようにやれていること

 

 

来年は50本以上。